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台湾が大好き♡

「台北散歩日和」:紗帽山

「台北散歩日和」:紗帽山

連載「台北散歩日和」第 4 回

ここ数日の寒の戻りで台北は肌寒い雨降りの日々が続いている。こんな時には無性に温泉が恋しくなる。台湾の温泉郷の発祥地である北投をはじめ、陽明山、紗帽山などの大屯火山系の温泉郷は、台北市内からのアクセスも良く、重宝している。とりわけ、紗帽山温泉は台北の奥座敷といった感があり、ここ数年来、ぼくは入り浸っている。

MRT淡水信義線の石牌駅で降り、駅前から508番のバスに乗って天母の北の端をかすめるように経由し、行義路の山道を登ること15分。行義路四のバス停を降りて直ぐの脇道を下って行くと、ほのかな硫黄臭とともに紗帽山温泉の湯けむりが見えてくる。

ぼくはこうした温泉郷の風情になぜか強く惹かれる。台湾の北から南までの様々な温泉地を巡っては、各地温泉郷のご当地ソングを作ったりもしている。台湾の温泉郷が抱かせてくれるある種の郷愁の念であったり、自然の景観との調和の美しさであったり、その土地の人々が紡いできた物語に対する共感であったり、そうしたものがぼくにインスピレーションを与え続けてくれるのだ。(追記☆)

せっかくなので、台湾の温泉郷の歴史を駆け足で辿ってみよう。その歴史は日本とも大きく関わっている。1894年にドイツ人のクエーリーによって、まず北投の地に温泉が発見された。日本による台湾の統治が始まった翌年の1896年には、大阪出身の平田源吾がこの北投の地に「天狗庵」という温泉旅館を開業し、これが台湾の温泉郷の幕開けとなった。もっとも、新北の温泉郷の烏来(ウーライ)の地名が台湾原住民族タイヤル語の熱湯を表す「wulay」に由来していることからも推察されるように、有史以前から台湾に温泉が存在すること自体は、そこに暮らす人々には早くから知られていたのは間違いないだろう。

日本統治時代には、その後も台湾各地で温泉地が開発された。現在でも台湾四大温泉として数えられる台北の北投、陽明山(当時は「草山」と言った)、台南の関子嶺、屏東の四重渓も、すべてこの時代に拓かれた温泉郷だ。ただし、当時の温泉地は警察や軍の療養施設としての性格が強く、特権階級のみが享受できる場所にすぎなかったことも記しておく。

戦後、日本人が台湾を引き揚げると、多くの温泉郷は廃れるか、国民政府の公娼制度の下、北投のように歓楽街へと性格を一変させていった。台湾の温泉が市民の誰もが楽しめるようになったのは、1979年に公娼制度が廃止され、1990年代に李登輝総統による台湾の民主化政策、それに続く地方行政府の健全化政策が進められたここ二十数年ほどのことである。そして、2009年からは「温泉美食カーニバル」という各温泉地の持ち回りのイベントも始まり、最近では日本をはじめとする外国の温泉郷との姉妹提携・交流が熱を帯びるなど、台湾各地の温泉郷はそれぞれが競ってインバウンドに知恵を絞っている。

ところで、台湾と日本の温泉は、そのシステムにおいて似て非なる部分も多い。たとえば、男女別で裸で入れる「裸湯大衆池」と呼ばれる大衆浴場もあるが、台湾では欧米と同じように、水着と水泳キャップを着用の男女混浴が主流である。また、カップルや家族連れなどに人気の時間制貸切りの個室風呂も、掛け流しではなく、大きな浴槽に都度お湯を貯め、使用後は必ず栓を抜いてお湯を流さなければならない。時間制限がある中お湯がなかなか貯まらないという事態もあるようだが、まあこうした違いもまた楽しめばよい。

さあ、紗帽山温泉に到着した。ここは「眠らない温泉」の異名を持ち、24時間営業の日帰り温泉施設と深夜まで営業している養生料理や鍋料理のレストランとが一体となっているのが特徴だ。また、レストランのミニマムチャージをクリアすれば、入浴料が免除されるシステムも有り難い。いつものように、ぼくは漢字で「鐳泉」と書かれたラジウム温泉の看板を掲げる「皇池温泉御膳館」の暖簾をくぐった。ここは男女別の大衆浴場があり、台湾の温泉に関心のある日本からの友人を必ずと言っていいほど連れてくる場所だ。

ここの露天の大衆浴場には演歌が流れており、ゆったりとしたスペースに秋田の玉川温泉とほぼ同じ泉質である強酸性硫黄泉の「青礦湯」、白濁した「白礦湯」の二種類のお湯があって、打たせ湯や乾湿両方のサウナまで整備されている。ぼくは青、白のお湯に交互に浸かりながら身体を芯から暖めていく。強酸性のお湯によって、日頃の疲れが一枚、一枚はがされていく感じが実にたまらない。そして、湯上がりの一杯とレストランの美味しい料理が、このあとぼくを待ち受けている。

ぼくの頼む料理はほぼ決まっている。
まずはここの看板料理で、米から土鍋で炊くタロイモのおかゆ「芋香砂鍋粥」だ。この料理は炊き上がるまでに40分はかかるので、一風呂浴びる前に予め注文しておくのがよい。そして、辛いものがだいじょうぶなら、発酵した唐辛子とレンギョの頭の蒸し物「剝椒鰱魚頭」をお勧めしたい。酸味を帯びてちょっぴりまろやかな口当たりの唐辛子の山から、熱々ピリ辛のレンギョの柔らかな身を少しずつ掘り出して頬張る快感。こりゃ、ビールが何本あっても足りないわな。

皇池温泉御膳館

皇池温泉御膳館
住所|台北市北投區行義路402巷42-1號
電話|886-2-2862-3688
時間|食事は12時から27時まで、温泉は24時間
アクセス|MRT淡水線「石牌」駅2番出口の右手前のKFC前からバス508、535、536に乗車して、バス停「行義路四」で下車。

追記☆

台湾の温泉について、作者の馬場さんは「一級棒温泉頌(いちばん温泉ソング)」(リンクから歌を聞けます)という歌を作りました!
馬場さんの友人Spa Lady ことWindy Yang(楊麗芳)さんがパーソナリティを務める正声FMラジオ局104.1Hzで、日曜日の13時〜14時に放送されているラジオ番組「一級棒的温泉郷」のオープニングテーマソングとして「一級棒温泉頌」は、使われています。
(アイキャッチ写真:Edward Lan@Flickr

寄稿者情報

馬場克樹“爸爸桑”
シンガーソングライター、俳優、フリーライター。北海道大学文学部卒。日本台湾交流協会台北事務所に駐在した後フリーとなり、台湾に移住。音楽創作に加え、映画、TVドラマ、CM、舞台で俳優としても幅広く活動。代表曲に台湾映画の主題歌として蔡健雅(タニア・チュア)に提供した「很靠近海(海のそばで)」がある。

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