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再生された日式住宅:台北・青田街の老樹の下に

連載:「台湾日式建築サンポ:都市偵探の楽しい時間」
第 5 回


それは偶然の出会いであった。

2011年、東アジア日式住宅研究会のメンバーとともに、私は台北市青田街の一角を歩いていた。

この辺は、道路に面して高い塀が巡らしてあり、「古そうな家だな」と思っても、中を伺うことは難しい。
でもその時、鉄の扉が半開きになっていた。
私はつい我慢できずに、その門をくぐり中に入ってしまった。そこには味わいのある木造住宅と、腕を組んで立つ男性がいた。

非礼を詫びつつ、「見学してもよろしいでしょうか?」と声をかけた。
「どうぞ、どうぞ」と笑顔で応じた彼が、この建物を取得し再生することになる賴志明さんであった。

しかし、内部はひどかった。
まともに歩ける床はわずかで柱は傾き、屋根に穴が開き、明るい日差しが差し込んでいた。
空き家再生が好きな私の目から見ても「これは難しいだろう」と思わせた。
しかし賴さんは「かつて台湾大学の教授が住んでいたこの家を、私はギャラリーに再生したい」と言う。今日はそのための下見なのだと。
和室と洋室が組み合わされ、日本的な雰囲気に、高床や煉瓦基礎など台湾的要素がミックスされていた。現地の技術がふんだんに使われているのが印象に残った。古びた板も、味のある歴史の証人のように思えてきた。


◆       ◆       ◆

あの出会いから5年が経った。
2016年、私は再び青田街の路地に立った。
かつての玄関に向き合い、私は唸った。「何も変わっていない」。
いや、もちろん変わっている。腐ったような饐えた匂いもせず、敷地の植栽は清潔に手が入っている。しかし、外壁の押縁下見板はほとんどが古い材のままだ(台湾の再生物件では外壁を新規材で貼り直すことが多く、私はいつも違和感を感じていた)。漆喰の壁もクラックはそのまま、ちょっと汚れた風合は変わらない。瓦も古いものばかり。これは、ここだけでは足りず、解体される近在の日式住宅のものを譲り受けて葺き直したのだ、と後に聞いた。

「さあ、どうぞ」
賴さんにうながされ、中に入って再び私は唸る。
真っ白な空間。贅沢に並ぶ現代アート。内部はまったく別の世界だ。
画廊としての機能的要求をしっかりと満たし、同時に防火・排煙などの安全法規をきちんと守っての再生。その中で、「いかに外観を保全するか」に心を配った結果なのだと彼は語った。

「外観をできるだけ残し、内部は新しい用途に合わせて大胆に改装する」。
台湾の文化財保護制度では、規制が厳しい順に「古蹟」「歴史建築」「風貌屋」があるが、ここは「風貌屋」として大胆なリノベーションを実現させたという。
私は嬉しかった。
再生前を知っていたから、なおさらだった。ちょっと自分のことのようで誇らしかった。

青田街は、老樹が多い。
暑さを遮る深い木陰の下で、築80年のこの家は、再び永く愛されることだろう。そして私は、台湾に行くという友人に「ここは絶対行くべきだよ」と勧めている。ちょっと得意げに、まるで自分の家のように。

〔青田茶館&敦煌画廊〕
住所:台北市大安區青田街8巷12號(MRT古亭駅 5 番出口から徒歩)
営業時間:11:00 〜 18:00
定休日:月曜日

寄稿者情報

渡邉義孝
一級建築士・尾道市立大学非常勤講師。 NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事。東アジア日式住宅研究会会員。1966年京都府生まれ。神楽坂の鈴木喜一建築計画工房・アユミギャラリーを経て2004年「風組・渡邉設計室」設立。住宅設計の他、民家再生・文化財調査などに携わる。著書に『風をたべた日々~アジア横断旅日記』(日経BP社)。共著に『セルフビルド~家をつくる自由』(旅行人)など。

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