Taisuki Café

台湾が大好き♡

散歩がてら気軽に食べれる虱目魚粥のおいしさに大満足


台南のような、虱目魚(サバヒー、ミルクフィッシュ)が大好きで長年虱目魚と付き合ってきた都市にとって、街道に散在する虱目魚粥店は、市民の生活スタイルや人口比重に合わせたように、正確に配置されているようにさえ感じる。


台湾の京都とも言われる、台湾南の古都「台南」。台南に住む人や出身の人たち、台南人はこのような悩みを抱えていることが多い。それは、他の地域出身の友人に「虱目魚のお粥のオススメは?」「牛肉スープは?」「○○の鱔魚麵を食べたこと無いなんて、台南へ行った意味がない……」などと言われること。

私のような台南でも東門外で育った台南人にとって、特に「虱目魚のお粥」だけは、わざわざ城内(台南中心部)へ食べ行くはずがない。虱目魚のお粥を食べる時というのは、基本的にビーサンを履いて、歩いても、たかが二百メートルぐらいの場所に行く。行っても自転車で10分以内に行ける場所で食べるのが、我々にとっての「虱目魚のお粥」なのだ。

小さい頃は虱目魚のお粥が、まだそれほどポピュラーな食べ物ではなく、お粥よりも、虱目魚を入れて作った「飯湯」の方がよく食べられていた。「飯湯」は、雑炊のような食べ物で、スープにはタケノコ、イカ、牡蠣、小エビ、骨なしの虱目魚などが入っている。具材を先にスープで煮込んでから、ご飯をいれ、最後はセロリやニラを散らして、胡椒少々で味を調える。このような海鮮飯湯は、ご飯粒がしっかり残っていて、お粥のようなドロリとした感じはない。現在、台南で流行りの虱目魚のお粥も、どちらかというとお粥よりも「飯湯」に近いのではないかと思う。

大学を卒業した時であっただろうか、台南旅行に来た他県出身の友人から城内にあるお寺の前の店の虱目魚粥が有名で、朝一番で並ばないと食べられないと聞いた。その友人が、朝早く起きて城内のその店まで行き、虱目魚粥を買ってきてくれて私はとても驚いたことがあった。それが初めて有名な台南小吃「虱目魚粥」を食べた経験だったのだが、母の手製の虱目魚粥とは、全然違った。

母の作り方は、まず、小さな片手鍋を使い、お米からじっくり煮込み、だんだん粘りが出て、ご飯粒が光るくらいになるまで煮込む。それは、いわゆる「糜」(マヮイー、台湾語の「お粥」)で、その後、虱目魚を加える。もしこれを離乳食にするなら、お米を煮込む段階で、キャベツを加え、虱目魚を入れたら出来るだけスプーンでつぶして細かくする。私はこの母の作る虱目魚粥が大好きで、胃が弱っているときや、脂っこいもを食べたくない時に、こういう糊状の「虱目魚糜」で胃腸をいたわる。

しかし、我が家はこの数年、トレンド風な飯湯のような虱目魚粥を食べるようになった。始まりは父が自転車に乗って、「崁腳」付近で虱目魚粥を買ってきたこと。年配の人々がいう崁腳は台南の城から出て仁徳交流道の方向へ行った辺りだ。あの辺には、元々小さな丘があったそうで、ここ数十年の開発工事のために丘がすっかり消えてしまった。しかし、自転車であの上り坂を越えるなんて、特におなかがすいた時だったら、まさに地獄だとも言える。崁腳にある虱目魚粥の店の作り方は、虱目魚の背骨の骨を取って、焼いてからつぶして、お粥に入れる。お粥はわりと柔らかい。それに、塩焼きの「魚腸」すらある。「魚腸」は鮮度が命なので、お昼になったらもう売り切れで食べられなくなる。

それから、なかなか自転車で崁腳へお粥を買いに行かなくなってきた頃、近所の伝統市場に、以前「賊仔市」で有名だった老舗店が引っ越して来た。初代オーナーは体が弱く、婿が店を継いでいた。典型的な「飯卓」(台南で一般的なセルフサービス形式のお店)式で、虱目魚粥がもちろんメーン料理である。醤油ベースのたれで煮込んだ豚肉のそぼろをかけたご飯、肉燥飯もある。屋台の大きな釜の側に、使い込まれた煮込み鍋があり、肉燥、厚揚げ、煮込み卵などが醤油ダレで煮込まれている。もう一つ少し浅い鍋には、台湾鯛と虱目魚の頭が入っている。そして、もう一つのお鍋には、タケノコの煮物が入っており、鉄板の上に載った小皿には、日替わりの小鉢、ソーセージやジャガイモの葉、キャベツ、タマネギと卵炒め、切り干し大根のオムレツなどが並んでいる。

特に注文を付けない限りこのお店の普通の魚粥は、骨無しの背中部分を使い、注文が入ってから、その量に合わせて片手鍋を強火にかけてお粥を作る。大釜で炊いたご飯で作るので、ご飯粒が固めで弾力があり、スープにくぐらせたお粥の食感はさらによい。そして油葱酥(揚げエシャロット)、セロリ、ニラを加え、スーパー級の牡蠣を少しプラスしてくれる気前のよさもうれしい。魚の身が全くパサついておらず、強火でさっと火を通したので、肉質が驚くほど柔らかい。

台南阿憨虱目魚粥,Photo by Looky

そして、この市場のお店が、我が家に「密着」した虱目魚粥のお店になった。まさにビーサンで歩いて行けるし、ご飯もあり、お粥もあり、魚頭もありで、テーブルの上は豪勢におかずいっぱいに出来る!さらにお腹いっぱいになるだけではなくて、お得感もいっぱいで大満足。B級グルメだからリーズナブルで、並ばず食べられる。ちょっと気になるのは知らない人と相席することだけだが、何回も相席したら顔見知りにもなったり。

どうせ訪れる人は近所の人なので、お隣さんたちでもある。そして、オーナーとお客さんたちの間には暗黙の理解がある。今の規模がちょうどよく、毎日当日の食材を用意して、売り切れになったら店じまい、質と量は負担出来る範囲でコントロールできるし、常連さんがおいしいものを食べたくても、観光客と競争せずに済む。お使いに、虱目魚頭二つを買って帰ったり、虱目魚粥をテイクアウトしてブランチにしてもちょうどいい。

私にとって、ビーサンを履き、ゆっくりと散歩して行ける範囲で、気のまま食べられる虱目魚粥こそが、本当に美味しい虱目魚粥である。

台南のような、虱目魚が大好きで長年虱目魚と付き合ってきた都市にとって、街道に散在する虱目魚粥店は、市民の生活スタイルや人口比重に合わせたように、正確に配置されているようにさえ感じる。下町や伝統市場にひそむ名店の虱目魚粥の店主たちは、こだわりが強い頑固な職人のようだ。台南に来たら、名店に拘らず、ビーサンを履いてふらりと現地の人っぽい雰囲気で虱目魚粥を食べてみてほしい。絶対に期待を裏切らないから。

(文、写真|米果『一個人的粗茶淡飯』、翻訳|編集部)

寄稿者情報

米果
台北在住の台南人、
小説やエッセイ、随筆などを書く。
料理と散策が大好き。
日本の小説や映画も熱中。
作家の宮部みゆきと映画監督の山田洋次と是枝裕和の大ファン。

インターネット本屋さん博客來OKAPIの 「日本小說教我的事」 、来日カフェ 「無謀な小旅行」 、月刊誌『Taipei Walker』の「我が家のテーブル」、週刊誌『新新聞』の「小事放送」、
インターネットメディア「天下独立評論」の 「台北捌玖零」 などのコラムを担当。

Twitter: @chensumi
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