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台南後壁の新東国民小学 :「日式校舎」の記憶

連載:「台湾日式建築サンポ:都市偵探の楽しい時間」
第7回

台南・正興街の「IORI TEA HOUSE」。
隣に座っていた女性・Sさんが見せてくれた1枚の写真。学生たちがワークショップで日式建築の学校を直している、という。私は「ぜひ見に行きたい」と頭を下げた。彼女は、「わかりました」と約束した。
それから5年が過ぎた。

2016年春、私は台南駅から区間列車に乗った。45分で着いた新營駅に、紹介を受けた連先生が待っていた。さわやかな青年教師。彼は私の荷物を車に積んだ。
後壁(ホービー)区の新東国民小学。

コンクリートの新校舎の傍らに、3つの木造建築が残っている。「辦公室」、「校長宿舎」、そして「教師宿舎」。教師宿舎はいわゆる「ニコイチ長屋」で、「あなたと出会ったSさんは、2010年にこの長屋を改修するワークショップに参加していたんです。放置され、痛んでいたこの建物を、みんなで大掃除し、補修し、ペンキを塗りました。その体験が、若者たちに『歴史的建造物は手を入れれば蘇る』ということを実感させたのです」と連先生は語った。

辦公室に向き合う。台湾らしい高い基礎と、柱がダブルになった「カップルドコラム」の正面。ギリシア建築のような三角の妻壁、ペディメントが、学校の顔としての風格を漂わせる。

内部は職員室になっていた。
「あっ!」
見上げた私は声を上げた。天井が撤去され、照明に浮かび上がったトラス(洋風小屋組み)が整然と並ぶさまは、本来は人目に触れないはずの屋根裏に潜む力学の精華が、晴れ着を纏って舞台に立つ姿に見えたからだ。
「2014年に、ここも子どもたちと職人とのコラボで再生したのです。あそこに棟札も見えるでしょう」。

辦公室の奥、かつて校長室があったあたりが、そのまま再生工事展示室になっていた。私が最も感銘を受けたのは、その部屋の壁に、机に、所狭しと展示されている情報や「実物サンプル」の豊かさだった。

壁には畳ほどの実大パネルがあり、竹木舞(たけこまい)と土塗り壁が、時間を追ってでき上がる姿が再現されている。「底塗1」「底塗2」でそれぞれ 45 日ずつ乾燥させる。きめの細かい「中塗」を施し、よく乾燥させてから「面塗」を2回で仕上げる。「麻の繊維を混ぜ込み、45 日養生する」とある。日本の技法とよく似ている。たどたどしく漢字を追っている私でも意味が分かる。きっと台湾の子どもたちにもリアルに伝わることだろう。

インタビュー動画の中で、作業に参加した子どもたちが「建物の作りがよくわかった」と語っている。
「先生は、こういう古い建物で働くのはどんな気持ちですか?」と私は聞いた。
すると連先生は、「毎朝、気持ちがいいのです」と答えた。
「窓を開けて、ヒノキの香りを感じる。こういう職場であることが、私たちの幸せです」。

辦公室の展示の中にこんな文字があった。
除了實體上的工藝成就與藝術価値、更包含了地方環境的共同記憶與人文意義
そう、「共同の記憶」は、歴史的建造物の本質と言えるだろう。ここを巣立った子らの心には、ずっとその記憶が刻まれているに違いない。

寄稿者情報

渡邉義孝
一級建築士・尾道市立大学非常勤講師。 NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事。東アジア日式住宅研究会会員。1966年京都府生まれ。神楽坂の鈴木喜一建築計画工房・アユミギャラリーを経て2004年「風組・渡邉設計室」設立。住宅設計の他、民家再生・文化財調査などに携わる。著書に『風をたべた日々~アジア横断旅日記』(日経BP社)。共著に『セルフビルド~家をつくる自由』(旅行人)など。

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